初めては幼なじみ(真樹サイド)~手のかかる転校生~
「うちも母子家庭だよ」
「そうなの?」
「うん」
同じ家庭環境のせいだろうか、この時、光輝との距離がグッと近くなった気
がした。
それから光輝は何も言わず、ただ、指先でストラップをクルクルと回すだけで、別の話題に変えようかと思ったけど、話し掛けられたくない雰囲気に思え、そのままこちらからは何も言わなかった。
こんな二月と言う中途半端な時期に転校してきた意味が少しだけ分かった気がした。
しかも、野球の有名校だと言うT学園から、野球部どころか他の部さえ胸を張れる成績などない一つもないこの公立中学への転校だ。
よほどの……事情があったのだろう。
次の日の昼休み。
女子数人とお弁当を食べ終えた時だった。
席に着いたまま、弁当箱をカバンに入れていると机の上に紙パック入りのリンゴジュースが置かれた。
顔を上げると
「昨日のストラップのお礼」
「くれるの?」
「うん。食後にいつも飲んでるでしょ?」
いつもと言っても光輝がこの学校に転校してきてまだ三日目だ。
もしかして……わたし、見られてた?
少しだけ感激に似た思いが胸の中で花が咲いた。
「ありがとう。頂くね」
こんな時でも、平静さを取りつくろうとする自分がいた。
(ありがとう嬉しい!)
満面の笑みを浮かべてそう言えばいいのに、光輝への思いが膨らみつつあったわたしは、それを感づかれまいと異常なほど平静さを取りつくろった。