フラワーデイズ
「いらっしゃいませ」
声だけを出して客の様子をじっと眺める。
男のお客さんは恥ずかしがって店を出ていってしまうことがあるから、しばらくは放置しておくほうがいいのだ。
一大決心して入ってきたのならば時間かかっても注文をしてくれるし、きっかけがつかめない客は店員から声をかけられるのを待っている。すぐさま声をかけてしまうとやっぱりやめたとなってしまうから少しだけ辛抱が必要なのだ。
その間に私はいつも客の観察をする。
すらりとした背の高い20代後半くらいの客はサラリーマンには見えなかった。髪型は長くも短くもないけどスーツを着てないし、犬をつれているわけでもない。(ときどきいるのだ。休日なんかに犬の散歩を装って家を出て記念日の花束を買っていったりするお客が)
かといって学生というには落ち着きがありすぎる。どちらかというと普通の商売じゃない感じだった。