フラワーデイズ


 そう、たとえるなら芸術家とか。

 うちの客でも一人画家さんがいる。
 年輩の男性でいつも決まってベレー帽をかぶっていて「やっぱり画家といえばベレー帽でしょう」という。ベレー帽を被っていれば平日の昼間に歩いていても職業不詳の怪しい人ではなく芸術家なんだな、と理解してもらえるからユニフォームみたいなものらしい。

 でも目の前の客はベレー帽を被ってはいなかった。


 きれいな色のカットソーに仕立ての良さそうなジャケット、ラインのきれいなジーンズにブーツらしいおしゃれな靴をはいている姿はまるでどこかの雑誌のモデルみたいだった。
 実際、かなりスタイルがいい。180センチくらいはあるんじゃないかと思う。


「なにかお探しですか」

 店に入ってきて三分以上経ってからようやく私は声をかけた。

「探してるってわけじゃないんだけどね」


 棚に並べられている商品から視線をあげると、その客は笑みを浮かべながらこちらを向いた。
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