Dummy Lover
心ではそんなことを思いながら、私は白谷に笑顔を向けた。
動揺しても、すぐに平静を取り戻せるところは、私の長所だと思う。
「白谷くんこそ、有名でしょ?私だって知ってるし」
「…まあ、そうかもね」
「え…」
私が笑顔で言うと、白谷泉も笑顔で返す。でも、目は笑っていない。
私の背筋に少し、寒気がする。
一瞬、時が止まったような感覚がした。
すると突然。
「じゃあ、二人には英語科資料室の整理をしてもらうから!」
菊池先生の声が聞こえた。
白谷泉は、その声と同時に愛想の良い、噂通りの彼に戻った。
「え!菊ちゃん、それって…」
「白谷は授業サボった罰。羽月さんはクラス委員の仕事よ!」
「菊ちゃん強引ー!」
「授業サボるお前が悪い!」
私は白谷の奇妙な笑みと、事の展開の早さに頭がついて行かずに、何も言えなかった。