哀のウタ
はじまり

ハァハァ...
さ、寒い...。携帯を開いて時間を見ると
AM3:24

また夢を見た。
裕哉(ゆうや)と付き合ってたときの夢。

「ん...あ、あゆ?また夢か。」

「あ、うん...。起こしちゃった?ごめんね?」

私は、神木 歩香(かみき あゆか)。
今日で17です。

分かるだろうけど、この眠そうな人は
今の私の彼氏、甲斐中 鵺吠(かいなか やく)。

裕哉は1年前付き合ってた人で、
話す前に暴力っていう奴だった。

それが嫌で嫌で、止めるたびに殴られたり、蹴られたり...悪いときには
モノを投げられたりして、逃げるようにして別れた...つもり。

そうです。裕哉は別れるとは認めてくれてないんです。
私はもう逃げて逃げて、鵺吠のところに行き着いたんだけどね。

まだ殴られたときの傷が背中と肩に残ってる。
まるで裕哉が「俺のことは忘れさせない」って言ってるみたい...。

逃げ出したあの日から定期的ってくらいに
裕哉との最後の日の夢をみて目を覚ます。

鵺吠は、そんな私を本当に心配してくれるんだ。

「ほら、ここにおいで」

「うん」

ポンポンと隣を叩いて、優しく微笑みかけてくれた。
鵺吠の腕に収まると、優しく抱きしめられる。

ほのかに香る香水の匂いが私の眠気をかき立ててくれたからなのか、
私はすぐまた眠りに落ちた。

「...守ってやれなくてごめんな」



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