キズナ~私たちを繋ぐもの~
「そして、父さんが死んで。……俺は必死だった。俺の家族だ。俺が、守らなきゃって……」
涙が、自分の目にも浮かんでくる。
もうぼやけて、こんなに近くにいる兄が見えない。
「お前がいつの間にか大人になって。いつしか俺の心を揺さぶるようになって」
「お……に……」
「司くんとつき合うようになってからは、言い様のない嫉妬だって感じてた。……だけど」
「い、ちゃ、ん」
「だけど、……妹であるお前を捨てきれない」
「……っつ」
「捨てきれないんだよ……」
兄は力が抜けたかのように、茫然とベッドの上で涙をこぼした。
私は、その決別の言葉を、ぼんやりと胸に受け取りながらも、解釈はできてなかった。
ただ涙が溢れて。
駄目なんだと言う事だけが分かった。
こんな風に、むさぼるように求めようとしてくれたとしても、
もう駄目なんだって。
兄の中で、『妹』の私は消えない。
彼の前で『女』になる前に、『妹』の私が立ちはだかってしまうんだって。