キズナ~私たちを繋ぐもの~
「司、さっきビール……」
「結局開けなかった。大丈夫だ。運転できるよ」
慌てて戸締りをして車に乗り込む。
助手席でに落ち着いてからようやく、兄の言葉が蘇ってきた。
『母さんが、危篤だ』
もう長くない。
そう言われていたけど、実感としては持てなかった。
もし間に合わなかったらどうなるの。
病室で弱々しく笑う母。
いつも辛そうに、自分の存在を否定し続けた母。
死なないで。
その願いは、届かないの?
車が夜の街を滑るように走っていく。
私はその流れる景色を、祈るような気持で見つめていた。