キズナ~私たちを繋ぐもの~


「司、さっきビール……」

「結局開けなかった。大丈夫だ。運転できるよ」


慌てて戸締りをして車に乗り込む。
助手席でに落ち着いてからようやく、兄の言葉が蘇ってきた。


『母さんが、危篤だ』


もう長くない。

そう言われていたけど、実感としては持てなかった。
もし間に合わなかったらどうなるの。

病室で弱々しく笑う母。
いつも辛そうに、自分の存在を否定し続けた母。


死なないで。

その願いは、届かないの?


車が夜の街を滑るように走っていく。
私はその流れる景色を、祈るような気持で見つめていた。


< 230 / 406 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop