キズナ~私たちを繋ぐもの~


 階段を下り、普段は浴びない朝のシャワーを思い切り浴びた。
タオルを肩にかけ、上半身裸のまま冷蔵庫から牛乳をとりだす。


綾乃がいた時はこんな格好ではフラフラ出来なかったな。


そう思うと何だかおかしい。
本当の兄妹なら、そんな事は気にしなかっただろうに。


結局俺は、
まるで自分の子供のように綾乃をいとおしんでいながらも、
どこかで女として意識していたんだろう。



 先月、英治と紗彩は結婚した。

誰にも本気にならないと思っていた英治が選んだのは、俺と契約恋愛をしていた女。

一年前には誰も予想できなかったその組み合わせに、思わず笑ってしまう。

でも、今の紗彩はどこか憑き物が取れたように凛としていて、そして強くなったように見える。

その紗彩に言われた言葉。


『あなたの親心は立派だけどね。
それで綾乃ちゃんが幸せになると思ったら大間違いだわ』


「厳しいな」


思わず笑いが漏れ出る。
紗彩は年下なのに、まるで姉みたいだ。

あんな風にはっきり言われて、ようやく分かった気がする。
自分自身の感情が。


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