キズナ~私たちを繋ぐもの~

「いらっしゃいませ」


なじみのオーナーが声をかけてくれる。

相変わらずの半袖Tシャツ。

オーナーでありながらギター奏者としての一面も持つ彼は、『演奏するから』とこともなげに笑うが、
まだ早い春のこの季節、外気が入ってくれば寒いんじゃないだろうかと思うのは俺だけだろうか。


「今日はちょっと此処で人と会う約束をしてるんだ……」


そう言うと、オーナーは思い当たったように頷いて、奥のテーブルを示した。


「あちらの方?」


その先に見えたのは、ダークブラウンのスーツを着て、所在なげに演奏に耳を傾けている司くん。


「ああ、ありがとう」


礼を言って、綾乃を促す。

緊張する時間の始まりだ。

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