キズナ~私たちを繋ぐもの~
「き、気をつけて」
「ああ。綾乃もゆっくり寝ろよ」
「あの、司」
「明日、遊園地だったっけ? 迎えに来るから、家で待ってて」
司は、何事もなかったかのように会話をして、いつものように軽くキスをした。
そして耳元に口を寄せて、聞こえないほど小さな声で囁く。
「俺がいるから。忘れないで」
「……」
この優しいキスに、どれだけの意味が詰まっていたのかを、私はこの時になってようやく気がついた。
念を押すように、別れ際に当たり前のように触れる唇は、司の小さな自己主張。
迷いを抱える私を、辛抱強く待ってくれる彼の優しさ。
司の体が車の中に消え、暗闇の通りを遠ざかっていく。
車のテールランプが見えなくなっても、私はしばらく家の中に入れなかった。
胸を支配するのは、彼への戸惑い。
私の気持ちを知ってなお、彼はまだ待っていてくれるつもりがあるんだろうか。
私は本当に、このまま彼に甘え続けていて良いんだろうか。