龍神







「真南ー」


「っ」


「唇そんなに噛むんじゃねぇよ~」


「…ふぇっ」





幸が優しいから、余計に涙がこぼれる


幸意外と体引き締まってるんだな、なんて頭のどこかで考えていた






「お前は気持ち悪くねぇよ~?」


「でも、あたしはっ」


「俺の妹をそれ以上悪く言わないでくれよ~」


「っ」





幸の声が、少し震えた



幸が今、どんな顔をしているのかはわからないけど、きっと普段の幸からは想像出来ないんだろうな




自分の過去をあまり話したがらない幸が、あたしのために話そうとしてくれてる


それだけでもう十分だった







「俺の妹さー俺が好きだったんだとよ。で、馬鹿だから俺を庇って死んじまった~」


「幸」


「俺なんか守らなくてよかったのによー」


「幸っ…」





それ以上言わなくていいと、あたしは幸の背中に手を回した




なんか地味に柑橘(カンキツ)系の香りがする


この匂いすごい好きだ




落ち着かせてくれる

あたしはてっきり女物の甘ったるい香りがするのかと思ってた






…でも。


同じだ



幸の妹とあたしは





恋をした



叶わない恋を


決して叶うことはない恋だったけれど






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