紙のない手紙
「それじゃ、改めて、ボクがこの世界を案内するっす。よろしくっす。」









忠時が軽く頭を下げたので、俺も軽く頭を下げた。







忠時は顔を上げると、鎌を空に掲げた。

すると、鎌はまた歪んだ空間の中へと消えていき、その代わりに旗が出てきた。









ガイドさんがよく持つあれだ。








「さっきから不思議なんだが…それはどうやっているんだ?」









俺は忠時と同じように手を空に掲げたが何も起こらなかった。









「あぁ…これはボク達、死神にしかできないっす。死神には個別の空間が与えられてて、その中に用具を閉まっておくっす。まぁ、見えないロッカーみたいなもんっす。」









「ほう…便利だな…」







「確かに便利っす……よっと…」









忠時は会話をしながら、旗を地面に投げた。


すると、旗は次第に大きくなり、ホウキほどの大きさになった。









「さ…乗るっす。」
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