琥珀色の誘惑 ―王国編―

(18)誘惑の報い

話し声は聞こえないが、衣擦れの音に混じって足音は確かにする。


「ねえっ! 誰か来る」

「嘘だ。ライラが誰も寄せ付けないと……あ、いや」


舞は花瓶を下ろし、ラシード王子の元まで行くと襟首を掴んだ。


「女官を眠らせたのも、あなたじゃないわね? 離宮の構造も、ライラに聞いたのね? ライラは抜け道まで知ってるのっ!? 答えなさい!」

「ラ、ライラが眠らせておくと言った。主屋から離宮までの道はライラに。抜け道は話してはいない! 絶対だ」


思った通りである。

だが、舞にはわからない。仮にもラシード“王子様”だ。問答無用で斬り捨てにはならないだろう。それに、ラシードがライラの言葉を真に受けこのような真似をした、と告白すれば、彼女も罪に問われるのではないか?


衣擦れの音はどんどん近づき、渡り廊下と離宮の入り口で止まった。 

舞がソッと窓の隙間から覗いた時、なんと警護の女官がふたり立っていたのだ。彼女らは廊下側から来た人間と二言三言かわし、入り口の扉を開けようとしている。

朝まで眠っているはずの人間が起きている、ということは……警護の女官もライラとグル!


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