琥珀色の誘惑 ―王国編―
彼らにとって女性は『守るべき対象』。男は妻を得て子供を作り、家族を守ってこそ一人前と認められる。

もちろん、父や夫を裏切った女には厳しい制裁を下すという。だが、一筋に夫を愛し、家族に尽くす妻に暴力を振るうなど……とんでもないことだった。


ミシュアル王子は、舞を引き止めたくて思いのほか強く掴んでしまったのだ、と勘違いしたらしい。それを正すべきかどうか、舞は悩んでいた。

ところがその時、なんとミシュアル王子が舞の前に跪いたのだ。


「済まぬ。だが私は決して乱暴な男ではないのだ。それだけは信じてくれ」


真摯な言葉に舞の胸はズキンと痛んだ。

思わず、「アルじゃないの!」と言ってしまいそうになる。

だが、そうなればヤイーシュはただでは済まないだろう。本当に、飛び降りろ、とか言い出しかねない。普通なら、そこまではしないだろうと思うが……。

舞の常識が通用しないことは、ここ数日の彼の行動が証明している。

舞はミシュアル王子の首に手を回し、いきなり抱きついた。


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