琥珀色の誘惑 ―王国編―
「早くアルのお嫁さんになりたい。王妃とかお妃様じゃなくて……アルのたったひとりの妻になりたいの。そうしたら、ライラも諦めてくれるよね? だって、ライラがなりたいのは第一夫人なんでしょう? まさか、離婚させてまで、とか考えてないよね?」


自分で言いながら舞は不安になって来る。

何と言ってもあのライラだ。舞を離婚に追いやって……とか企みそうで怖い。だが、抱き締める力が強くなったのは舞ではなく、ミシュアル王子のほうだった。


「お前の愛情と信頼に、私は一生涯の誠実を持って応える。国王としての命は国民のものだが、ひとりの男として……私の全てはお前のものだ。決して、誰かと分け合うようなことにはならない。……よいな?」


舞が無言で頷くと、ミシュアル王子はキスの続きを始めた。彼の体は次第に熱を帯び、ふたりはお互いの唇を知ることに夢中になる。
 

刹那、祈りの間に風が吹き込んだ。

ふたりの情熱に濃度を増した空気が、一陣の清涼な風に吹き飛ばされる。舞がそれを肌で感じた直後――。


『なんてことだ。私としたことが……』


唇を離したミシュアル王子が小さく呻き、その視線の先には、ヌール妃が居たのだった!


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