琥珀色の誘惑 ―王国編―

(22)いけない口づけ

(み、見られた? キスシーンを……いや、それどころじゃなく。アルがここにいたらヤバイんじゃないの?)


舞がパニックになりかけた時、ミシュアル王子はサッと彼女を背に庇った。

そのまま右膝を畳の上につき、臣下の礼を取る。腕を掴んだミシュアル王子が膝を折った為、舞も彼のすぐ後ろに座り込んだ。ちょうど畳なので正座には都合が良い。

もっとも、正確に言えばクアルンでは、王妃より王太子のほうが身分は上である。しかし場所が場所だけに、その主張が通るかどうかは微妙だろう。


「……」


口を開き掛けたミシュアル王子に対して、ヌール妃は右の手の平を見せた。何も言うな、といったジェスチャーだ。


『ヌール様、護衛の女官を呼んで参りましょうか?』

『いえ、誰もおりませんね。気のせいでしょう。さあ、皆も休みなさい』


女官の問い掛けに涼やかな声で答え、大勢を引き連れ、ヌール妃は引き上げて行った。


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