琥珀色の誘惑 ―王国編―
ついつい……。


「そうですね。後一週間で結婚式ですから、その後は、ハディージャ様のお許しを頂かずとも、出入り出来ますものね。それからで充分です!」


少し意地悪かな? とも思う。でも、日本人特有の愛想笑いばっかりだと侮られる、とミシュアル王子だけじゃなく、ヌール妃にも言われたばかりだ。


ハディージャ妃の肩がプルプルと震え、その三秒後――弾けたような笑い声が庭に広がった。


「何を言ってるのかしら? このお庭は“正妃の庭”だと言ってるでしょう」

「そんなことはわかってます。ですから、一週間後にわたしはアル……王太子殿下の正妃に」


胸より大きい胴回りを震わせ、ハディージャ妃は再び笑った。


「なあに、本当にご存知ないの? お前は王太子殿下の“第二夫人”となるのよ! ここはいずれ正妃となられる方のお庭。お前には生涯、足を踏み入れることが出来ない場所。さっさと立ち去りなさい!」


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