琥珀色の誘惑 ―王国編―

(2)さらわれた花嫁

『王太子殿下! 裏門から女官がふたり出て行ったと報告がありました! 三十分前です』


ミシュアル王子にふたりの女官が走り寄った。

彼女らは普段、出入り口の後宮側に立つ。警備の役目を負った女官たちだ。他の者より些か動きやすい格好をして、小振りのジャンビーアを腰に吊るしている。

後宮内に男子が立ち入れるのは、それこそ国家を揺るがす緊急事態……戦争やテロなどの場合だけだ。


王太子の婚約者が姿を消したとは言え、現時点では詳細がわからない。

覚悟の出奔か、或いは誘拐されたのか。

後者なら国を挙げての大捜索となるが、前者なら……ミシュアル王子の不名誉となり、問答無用で婚約解消となってしまう。


何としても公にならないうちに、舞を連れ戻さねばならない。


後宮内の庭を横切ると、北の端に門が見える。

ミシュアル王子は警護の女官に案内され、宮殿の庭との境に作られた、女官用出入り口までやって来た。

門の向こうにはターヒルの姿もある。


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