琥珀色の誘惑 ―王国編―
日本人は貧相な体格だと油断していた。

それを確認しておこうと、風呂場にまで乗り込んだのだ。それが、舞は予想外にも素晴らしいボディラインをしていた。

自慢のアーモンド色の肌は、日本人独特のシルクの肌には敵いそうもない。ストレートな黒髪と漆黒の瞳――後宮の晩餐会で顔を合わせた時、既に王妃と言わんばかりのドレスに身を包んでいた。

鏡に近づき、ライラは自分の顔をジッと見る。表情は強張り、肌はくすみ、疲労の色も濃い。

だが、諦める訳にはいかない。



その時、玄関に近づく大勢の足音が聞こえた。

不作法にも扉はいきなり開かれ、数人の男が入ってくる。

ライラは軽く羽織ったヒジャブで顔を覆い、怒鳴りつけようとするが……。


男たちの先頭に立つ人物を見て、声を失う。それは、ミシュアル王子の側近、ターヒル・ビン・サルマーンだった。


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