琥珀色の誘惑 ―王国編―
舞にもどうにかわかるアラビア語でターヒルが叫んだ。

同時に、彼女も視線をミシュアル王子とヤイーシュに戻す。


決闘の最中に、突然、ミシュアル王子が剣を投げたのだ。ヤイーシュにしたら想定外のこと。

彼は必死に振り下ろすジャンビーアを止めようとするが――。

ジャンビーアは日本刀にように長い武器ではない。ヤイーシュは相当な勢いで踏み込んでいた。


一方、ミシュアル王子もストップするのが精一杯で自分の体を反転させる余裕などなく。

ヤイーシュの剣が頭上に振り下ろされたその時、なんとミシュアル王子は更に踏み込んだ。

王子の手は躊躇したヤイーシュの手首を捉える。

しかし、ジャンビーアの柄に最も近い……鍔元と呼ばれる部分がミシュアル王子の左肩に食い込んだ。刃は肩の肉を切り裂き、オリーブ色の肌を赤く染める。


「アルッ! アル、アル!」

「静かにいたせっ!」


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