琥珀色の誘惑 ―王国編―

(20)女神の誤算

黙り込むミシュアル王子の顔色を伺いつつ、ターヒルがおずおずと口を挟んだ。


「例えそれでも、軍務大臣が陛下を偽っていた事実は消えないのでは?」


確かに「父親が誰か」ではなく、「純潔でない娘を正妃にしようとした」という方が重要だった。

この場合、マッダーフが真実を知っていたかどうかは関係ないという。


「では、僕が頼んだのだとしたら? 自らの罪を隠す為に、アルの正妃になるように推挙したことにすれば……」

「ラシード凄いっ! その根性って立派よ!」


一瞬、舞には名案に思えた。

それにラシード王子の気合の入った愛情にも……。

ライラは、ラシード王子に友情しか感じていないのかも知れない。でも、ラシード王子がライラに娘を取り戻してあげたら、愛情に変わる可能性は大だ。すぐには無理でも、子供の父親ってだけの卑怯者と結婚させられるより、ライラも幸せではなかろうか。

ちょっとだけ……恋敵を厄介払い出来ると思ったことは内緒である。


だが、舞とラシード王子の楽観的な考えを、ミシュアル王子は見事に叩き壊してくれた。


< 298 / 507 >

この作品をシェア

pagetop