琥珀色の誘惑 ―王国編―
「アル! 後ろっ!」


舞が叫ぶと同時に、ミシュアル王子が真っ先にしたのは彼女の腕を掴んだことだった。

自分の後ろに舞を隠し、彼は腰に吊るしたジャンビーアを右手で抜いた。そして、斬りかかる兵士の剣を思い切り薙ぎ払う。すると、なんと兵士の剣は真っ二つに折れたのだ。

どうやら、王子の持つ剣とは質が違うらしい。

折れた剣を片手に呆然と立ち尽くす兵士の胸に、ミシュアル王子のジャンビーアが叩き込まれる。

骨が砕けるような音が聞こえ、兵士はその場に倒れ込んだ。


(こっ……殺したのっ?)


蒼白になる舞の後方で何かが風を切る音がした。

その瞬間――。


「舞っ!」


ミシュアル王子が日本語で舞の名を叫び、掴んだ腕をグイッと引いた。

腕が抜けそうなほど痛い。被っていた砂色のアバヤがふわっと外れ、花嫁衣裳を身につけた舞の姿が露わになる。


その直後、舞が二秒前まで居た場所を、ジャンビーアの刃が切り裂いた!


< 334 / 507 >

この作品をシェア

pagetop