琥珀色の誘惑 ―王国編―
舞がそのことを馬鹿正直にも口にすると、彼は再び胸の前で手を合わせ「イン・シャーアッラー」と呟き、微笑む。

――それこそ、アッラーのお導き。

舞がミシュアル王子の花嫁になるために、守られてきた証である、と。


結果的に舞は純潔を守り続けた。言い寄る男がいなかった、というのは横に置いておくとして。ミシュアル王子とピッタリの身長で、彼が結婚を必要とするタイミングで、舞は二十歳を迎えたのだ。


(イン・シャーアッラーって……なんか凄いかも)


運命がふたりの味方をして、足りない分はミシュアル王子が必死で繋ぎ合わせた。

「愛してる」なんて言葉じゃ表し切れない想いを、彼は舞に示してくれた気がする。


「アーイシャ。あなたがミシュアルに応えたいと思うなら、どうか、彼を褒め称えて下さい。彼の努力が素晴らしいものである、と。そして、あなたに大きな幸福を与えたことを、伝えてやっては貰えませんか」


そしてサディーク王子は、月瀬の両親や弟とは王宮で会えると教えてくれた。

更には、日本の披露宴は比較的自由に行えるので、自分は出席しないが楽しんでくるように、そう言ってくれたのだった。


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