琥珀色の誘惑 ―王国編―
一族の女性に手を取られ、舞は白い絨毯の上を歩いた。

ミシュアル王子は祭壇の前で待っている。そこには“イマーム(導師)”と呼ばれる老齢の男性が立っており、彼はアル=エドハン一族の祭司だという。


本当なら早めに一族と合流し、リハーサルをする予定だった。ところが色々あって、ぶっつけ本番になってしまったのだ。

舞は連れて行かれるままに、ミシュアル王子の左側に立つ。

急場凌ぎではあるが、舞のすぐ後ろにシャムスが身を屈め、イマームの言葉を訳してくれる。


ふたりは先ほどのラシード王子とライラのように、祭壇の前に跪いた。

そして両手を合わせると、イマームがコーランを開き、詠うように朗読を始める。


次は『説教』だ。夫として、妻としてどうあるべきか、という話が続く。以前、ミシュアル王子が「婚外交渉など初犯はムチ打ち、二度目は死刑」と言っていたが……。それと同じようなことを、改めて諭される。


そして突然、イマームから質問をされた。


『おまえはこの男を夫とするか?』


その問いに、『はい、夫とします』と舞は答える。同じ質問は三度繰り返され、その都度、同じように答えるのが決まりであった。


何でも、三回言うことに意味があり、それで結婚が成立するのだという。

逆に、夫が妻に『離婚する』と三回言えば、それも成立してしまうらしい。……それはともかく。


ムスリムの式ではその後、アッラーの恩恵を頂く為に両手で顔を洗うような仕草をして、式はお終いになるのだが……。


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