琥珀色の誘惑 ―王国編―
ふたりが戻ったのは、さっきと同じテントだ。

サディーク王子はすでにおらず、シャムスもついては来なかった。ミシュアル王子と全くのふたりきりだと思うと、どこか気恥ずかしい。


しかし、王子はやけに無口である。


舞が先に口を開き、サディーク王子に言われた通り、感謝の気持ちを伝えようとした時だ。いきなり携帯電話が鳴った。


砂漠って携帯が繋がるんだ! と感心する一方で、どうして邪魔するのよ、という気にもなる。


だが携帯を切り、ミシュアル王子はホッとしたように笑顔を見せた。


「どうしたの? 良い事でもあった?」

「そうだ。ライラの娘を確保した。先ほどマッダーフと対決した時は、まだ押さえていなかったのだ。だが見つけてすぐ、ターヒルの部下が全ての手続きを終えた。これで、ルナはラシードの娘となった」

「…………ルナ?」


その場に立ち会っていたとは言え、舞にはサッパリわからない。


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