琥珀色の誘惑 ―王国編―
ミシュアル王子に細かく教えてもらい、ようやくライラの一件が決着したことを知ったのだった。


「じゃあ……ラシードの子供になっちゃったんだ」


マッダーフを騙す為に、舞もライラもラシード王子すら騙したと言うのだから恐れ入る。「敵をあざむくにはまず味方から」って言葉があるので、怒るわけにもいかない。


一番気の毒なのはラシード王子の気もするが……。

何と言っても、知らぬうちに四十歳近い女性に庶子を産ませたことになっているのだ。罪にはならないだろうが、失笑は買うだろう。


「いや、ラシードは喜んでいる。これでライラは生涯ラシードから離れぬであろう」


父権が絶対のクアルンにあり、しかも王室だ。

ライラの娘は『罪の子』から『王女』に立場が逆転した。


しかしそれは、ライラが永遠に実母と名乗れないことを意味する。


「舞、ライラはお前の名誉を貶め、それが出来ぬとあらば殺そうとした。これ以上の情けは無用だ」


舞の曇った表情に気付き、ミシュアル王子が機先を制した。


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