琥珀色の誘惑 ―王国編―
そこまで口にして、ミシュアル王子もやっと気がついたらしい。

黙っていたらすべてが、舞のため、になるのに、彼は嘘がつけず真実を口にしてしまう。


「いや、だからと言って愛を疎(おろそ)かにした訳ではない。もちろん、一番重要なのは」


懸命に言い訳を始める王子を見て、舞は可笑しくなり相好を崩した。


「すべてが『神の思し召し』でしょ? アルが傍にいてくれたら、アッラーはいつでもわたしたちの味方ね」


その言葉にミシュアル王子の瞳は一瞬で輝く。


「そうだ。私たちには神のご加護がある。十五年に及ぶ月日も、八七〇〇キロという距離も、多くの人々が私たちに与えた試練は、全て排除した。だがもし……」

「アル?」


ミシュアル王子は舞をきつく抱き締め、力強く宣言したのだ。


「もし、神のご加護を失った時は、私が全力でお前を守ろう。神は時折、誤った選択をする。それが我々に下された新たな試練であったとしても、私は常にお前と共にある。安心いたせ」


その言葉は本当に力強く、この人に一生ついて行こう! と思えるものだったのだが……。


「う、うれしい……んだけど、アル? さっきから何してるの?」


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