琥珀色の誘惑 ―王国編―
この国は本当にナツメヤシが多い。

舞は着替えを終え、ミシュアル王子が迎えにくるまでの時間、オアシスの周囲を散策した。そして、至るところに生えているナツメヤシの木に触れる。


クアルンに来てから、朝・昼・晩と食後のデザートで出て来るのがコレだ。ちょっとしたコーヒータイムにもクッキーのように添えられている。完熟乾燥した実で、日本で言うなら干し柿のような味だ。お土産用にも売られていて、英語で“デーツ”と言う。

クアルンでは実の熟した度合いから、バラフ⇒ルタブ⇒タムル⇒ハシャフに変わって行く。

干し柿のように甘くて美味しい辺りは“タムル”だとミシュアル王子に教えてもらった。


舞は自分と同じ年頃の、アル=エドハン族の女性と一緒に木々の間を歩いていた。

辺りを見回せば、帰り支度をする女性たちと少し離れた気がする。

彼女もそう思ったらしい。皆の居る場所を指差し、『そろそろ戻りましょう』という感じのことを言った。


舞もニッコリ笑って、『ええ、そうね』と答えた直後のこと。


女性の短い悲鳴が聞こえ――舞の視界は、真っ暗になった。


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