琥珀色の誘惑 ―王国編―

(5)トラブル・ロマンス

『ミシュアルさまーっ!』


女が独り、砂丘を駆け上がってくる。それは普通では考えられない事態だ。ミシュアル王子の胸に最悪の予感が走った。


『どうしたっ! 妻に何があった!?』

『判りませぬ。お付きの者と一緒に、突如お姿が掻き消えました!』


年配の女は息を切らせ、砂上に平伏しさめざめと泣き始める。


『ここより一番近い基地に連絡! 国境警備隊にも連絡だ!』


そう命じると、ミシュアル王子はオアシスに向かって駆け下りた。



砂漠には危険が多く潜んでいる。

蛇や蜘蛛などの毒虫に限らず、寒暖の差や砂嵐など、自然の猛威も恐ろしい。

だがそれ以上に警戒すべきは、やはり人間であった。


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