琥珀色の誘惑 ―王国編―
だが、最近は厳しくなった。

特別部隊が組織され、すでに何箇所もの町が潰された。逮捕された仲間も相当な数だ。

それもこれも、国王が代替りしてからである。


クアルンの先代国王は“奴隷市”の存在を黙認してくれた。

前王太子に至っては、何度か競りに加わり、数人の性奴隷を買って行ったほどだ。

かなり気性の荒い男で、おそらく一人も生きてはいないだろう。彼が国王になった暁には、“奴隷市”は国家公認になる、という話が纏まりつつあったくらいだ。


だが、彼らは次々に亡くなり……代わって王位に就いたのは改革に燃える現在の国王だった。

しかも今の王太子は最悪だ。

コーランの教えを遵守し、年に数ヶ月は部族に戻り、砂漠の民として過ごす王太子など彼らには邪魔以外の何者でもない。

間もなくミシュアル国王が誕生するという。その時にはクアルン国内で市は出来なくなる、という噂が広まっている。



『また一斉摘発にあったんじゃないだろうな』

『そんな情報は入ってきてねぇぞ』

『結構な金を渡してるんだ。摘発前にはまた連絡があるさ』

『それに、今の王太子は女の尻を追い回してるって話だぜ。今月中に即位ってことだし、こんな砂漠の僻地でやってる競りのことなんざ、忘れてるさ』


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