琥珀色の誘惑 ―王国編―

(6)シークの罠

ラフマーン・スルタン国との国境付近に、二十頭余りの馬と六台の馬車が停まった。

砂漠はすでに夜の女神の支配下にあり、砂粒まで漆黒に塗りつぶされている。日が沈むと冷たい風が吹き荒れ、荷台を覆う幌は大きく揺さぶられた。

総勢四十名は下らない男たちが、砂漠の上に作られた簡易的な町に降り立つ。


『今回は六人か。まあまあだな』

『ここに戻る途中で異国の女を拾ったのは大きかった』

『ああ、オアシスで召使いを連れて水浴びなんざ、どこかの国のプリンセスかも知れんな』

『それはいい! 東洋の小国のプリンセスといえば、さらに金になるぞ!』

『だが東洋人は初めてだ。競りにかける前に味見するか』

『よせよせ、四割……下手をすれば半額に落ちる。そっちは金で買える女で我慢しておけ』


男たちは微妙に的を射ていることに気付かない。


『ん、随分遅くなっちまったが、ここはこんなに静かだったか?』

『まさか、次の場所に町が移ったんじゃねぇだろうな』

『いや、ここに移って間もないはずだ。寝静まってるだけだろう』


競り、早く言えば“奴隷市”が開催される日は、特別なルートで招待された色んな国の金持ちが集まる。

その日は国境警備隊の一部に金を払い、この一帯を警備区域から外してもらうのだ。


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