琥珀色の誘惑 ―王国編―
何人かが声を揃えて笑った。

彼らの言う通りだ。ミシュアル王子は新妻に必死である。それ以外のことは、単なるオマケに過ぎない。


盗賊団の中で頭領と呼ばれる男は、懇意にしている宿屋の看板を見つけ、その大きなテントに近づいた。

ちゃんとした寝具で眠れるのは町にいる時くらいだ。ここなら数人の女も手配してくれる。女に飢えた連中が先走って商品を疵物にする前に、娼婦を抱かせてやる必要があった。

しかし、いつもに比べたらあまりにも人の気配がない。

頭領もさすがに不安になり……その時だ。



目の前にあるテントが一瞬で崩れ落ちた。

いや、それ一つだけではない。町を形成していたテント群が全て倒れたのだ。

そして、残骸の向こうからライトが一斉照射されたのである。


盗賊団全員の目に信じられない光景が映った。


テントを一瞬にして破壊し、さらには粉々に踏み潰しつつ彼らに向かってくる物体……それはどう見ても戦車。それも一台や二台ではない。二桁に達しようかという戦車が町全体を取り囲んでいた。


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