琥珀色の誘惑 ―王国編―
ミシュアル王子と舞を乗せたヘリが着陸したのは、ラフマーン国内のハスール市にある最高級ホテル。この辺りの一流ホテルには専用ヘリポートが完備しているという。いわゆるオイルダラーを相手にする場合、必要な設備らしい。

クアルン国内のアブル砂漠近郊はお世辞にも拓けてはおらず……。こういった高級ホテルのある都市までは、ジェットヘリでも数時間掛かった。

疲れている舞を少しでも早く休ませたい、そう思ったミシュアル王子は圧倒的に近いハスール市を選んだ。


日本でミシュアル王子が泊まっていたホテルも相当豪華だった。でも、ラフマーン湾沿いの観光地に建つこのホテルも中々ゴージャスだ。

ただ、イスラム風と西洋風をチャンポンにした印象がどうもアンバランスに感じる。

その時、ふいに王太子の宮殿にあったコタツを思い出し舞は吹き出した。


(アレはいいのよ。だってアルの愛だもん)


王宮に移る時は、例のコタツや提灯も一緒に持って行こうと心に決める。

軽く絨毯の上をスキップして、リビングの扉を開けた瞬間――舞の耳に日本語が飛び込んで来た。


「ああ、感謝している、サディーク。あの連中は裁判に掛けられ、極刑は間違いないだろう。次はダリャの王宮で会おう」


そう言って受話器を下ろすミシュアル王子の姿があった。

白いシャツと黒のスラックスが妙に新鮮で、舞はどきどきしてしまう。


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