琥珀色の誘惑 ―王国編―

(13)家族の絆

王宮の一室に通され、舞は頭に被ったヒジャブを取った。


「お父さん! お母さん! 遼!」


懐かしい顔を見た瞬間、思わず母に飛びつく。

母は家族の中で一番小柄だ。とはいえ、一六〇センチ台後半はあるだろう。父は舞と同じくらい、最も長身は遼だった。

でも、弟の隣に立つサディーク王子の身長がミシュアル王子と遜色ないため、一八〇を超す遼でも小さく見える。


「舞ちゃん、舞ちゃん、結婚おめでとう! 本当にお姫様になったのねぇ。母さん、寂しいけど嬉しいわ。だって運命ですもの! 王子様とだったら、末永く幸せに暮らせるのよ……だって、物語は全部そうでしょう?」


本気か冗談か、昔から今ひとつ判らない母だが……。

それでも、娘を手放して寂しいのは事実だろう。「おめでとう」「よかった」と微笑むが、その瞳に涙が浮かんでいた。


サディーク王子はスッと舞に近づき、


「一時間ほど席を外します。私が戻るまで、ここには誰も来ない。安心して家族と過ごしなさい」


小さく呟き、ふわっと微笑んだ。

グレーの瞳は冷たく見えるのに、彼の笑顔は日本の春のように暖かい。心遣いに感謝し、舞はサディーク王子に頭を下げた。


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