琥珀色の誘惑 ―王国編―
その返事に舞はビックリだ。

まさか、ミシュアル王子がそんなことを命じていたとは思わなかった。ライラ贔屓だと思っていたが、大きな勘違いだったらしい。


後宮における女主人の立ち居振る舞いや、王族の女としての基本。必ず後宮女官を同席させた上で、舞に教えること。

その引き替え条件として、小さなアーイシャ王女を後宮に連れて行き、王妃である舞との目通りが許されたという。

舞の婚約披露がこの後宮で行われたように、小さなアーイシャも王妃に披露してもらう必要があった。王族女性のトップである舞に認めて貰わなくては、王女には婚約話の一つも来ないだろう。


「陛下はわたくしを決してお許しにはならないでしょう。乳母を付けるよう命じられたのも……ルナ様には王女のお立場に相応しい貞操観念を教える人間が必要であるとの仰せです。アーイシャ様に女のお子様が誕生した後は、後宮への出入りは最小限に留めるよう申されました」


ライラは呟いた後、唇を噛み締めた。


ミシュアル王子はライラが自分の娘に近づくことすら許せないのだ。

シャムスなどは当然のようにうなずいている。一つの価値観を持ち、婚約者一筋で生きてきたシャムスにとって、ミシュアル王子の考えこそ正義なのだろう。


舞は胸の奥にモヤモヤを抱えたまま、後宮は新王妃を祝う宴の夜を迎えた。 


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