琥珀色の誘惑 ―王国編―
それもそうだろう。噂でラシード王子と同じ色の髪と聞いていた女性もいるはずだ。部屋の隅で、シャムスやクブラーも青褪めている。 

そこで、舞は語気を強めて言った。


「まあ、本当にラシード王子にそっくりね!!」


ヌール妃の影響で、王族女性のほとんどが日本語を多少なりとも理解する。


「ねぇ、サーラー王女もそう思われるでしょう!」


……異国の女性、それも二日目とはいえ、王妃は王妃だ。問い掛けられた老齢のサーラー王女は、静々と頭を下げて答えた。


『アーイシャ妃の仰せられるままでございます』


一転して、周囲は「ラシード殿下によく似ておいでで」などと言い始める。


「こちらのライラが、実の子同様に育てたいと言っています。皆さんも協力してあげて下さい」


舞がニッコリ微笑むと、一同からホッとしたような笑みが浮かんできた。

すると、


『ライラ様も男の子に恵まれますように』


などと言った声が上がった。


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