琥珀色の誘惑 ―王国編―
少し違和感を覚えたが、それは確かに日本語だった。その声にヤイーシュはドキリとする。


(声まで……舞に似ている)


女性はショックだったのか目が潤み、今にも泣き出しそうだ。


今日のヤイーシュは、日本に行った時と同じくスーツ姿だった。薄い茶色の髪と青い瞳を見て、彼女はヤイーシュを外国人観光客だと思ったのだろう。

微妙に違うが、否定するのも面倒だ。


「ええ、ドバイの国民ではありません。今、コーヒーショップの人に連絡を頼みました。すぐに警備室の人間が来てくれるでしょう」

「あ、ありがとうございます。バッグは戻って来るでしょうか?」

「残念ですが、こういったケースで戻って来ることはまずないですね」

「私……どうしたらいいの?」


そう言うと、彼女は泣き崩れた。



彼女はドバイに恋人がいて、会いに来たという。

ところが、その恋人には妻がいて……彼女は遊ばれていたのだ。


「イスラムの男性は誠実だと聞いてたのに。結婚しようと言われたから……だから、私」


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