琥珀色の誘惑 ―王国編―
買い物といえば、市場(スーク)のような場所を舞はイメージしていた。

そんな彼女の前に、銀座の有名デパート顔負けの建物が姿を見せた。違いと言えば、派手な看板や水着のポスターがないくらいか。

正面にドンと掲げられた看板にはアラビア語で『女性専用』と書いてあるらしい。


先にターヒルとヤイーシュが降り、安全を確認してから最後に舞が降りる。

デパートの責任者らしき男性がニコニコして車に脇に立っていた。

オーナーは男性だが、店内の責任者や従業員は全て女性。警察官に見える警備員が入り口の左右にふたりずつ立ち、外は男性が、中は女性の警備員で守っている。そんな説明をシャムスから聞きながら、舞は車の外に出た。


その時、だ。

不意に舞の耳に大きなアラビア語が聞こえた。

振り返ると、ひとりの男性が何かを手に、舞に駆け寄ってくる。近くまで来て、それがガラス製の瓶で、中に何かの液体が入っていることに気付く。

男は大声で叫びながら、口の開いたガラス瓶を舞に向かって投げつけた!


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