琥珀色の誘惑 ―王国編―
舞が今着ているワンピースは、成田空港で調達した物だ。

着替えも持って来なかった、と落ち込む舞に、ミシュアル王子は彼女がホテルに忘れたボストンバッグを差し出す。無いよりましだが、舞が切ない思いに駆られた時、王子はターヒルに命じた。

すると、舞のもとには、あっという間に数百着の衣装が届けられた。

サイズ重視で持って来られたため、舞の感覚では法外な値札の付いた洋服もあったが。

何着か選ぼうとした舞に、ミシュアル王子は言ったのだ。


「選ぶ時間はない。全部トランクルームに乗せよ」


目が点になる舞の前で、王子は一着だけ選んで彼女に渡した。

それがこの黒いサテンのワンピースだ。

サラサラで綺麗なドレープを描くスカートは膝までの長さだった。その分、ロングボレロがふくらはぎ辺りまで来て、腕や肩、胸元など全身をしっかりと隠すデザイン。黒を選んだのは、アバヤに似ているからかも知れない。


そして今、そのボレロは舞の身体から離れ――。


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