琥珀色の誘惑 ―王国編―
「駄目です!」


シャムスは悲鳴のような声を上げる。 


「申し訳ありません。ですが、ふたりとも我が国で五本の指に入る勇者にございます。そうでなければミシュアル様の護衛や側近など務まりません」


大丈夫だとわかっていても心配するものじゃない、婚約者なんでしょう?

舞はそんな言葉を口にし掛けた。だが、その時気付いたのだ。シャムスの肩も指も震えていることに。あからさまに婚約者の心配をすることが出来ない。舞の傍にいて、舞を守らなければならない――それがシャムスの立場なのだろう。

それに我侭言って車を停めたりしても、多分、舞には何も出来ない。


「うん……そう、よね。きっと大丈夫」


そう言うと、舞はシャムスの手をしっかりと握る。

ふたりは視線が合って、静かに微笑を交わした。


リムジンはけたたましいサイレンを鳴らす護衛車両に囲まれ、ノンストップで宮殿に駆け戻ったのだった。


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