琥珀色の誘惑 ―王国編―
舞はそれをシャムスから聞いた。

ターヒルがシャムスの婚約者だと知った時、舞はターヒルを褒めたのだ。「素敵な男性ね」「優しそうな人よね」といった……日本で言う“お世辞”が八割を占めている。

だが、そんな舞の言葉に周囲の女官はどよめいた。

ミシュアル王子の前では、絶対に他の男性を褒めてはいけない――そう諭されたのだった。



しかしそれでも、舞は日本人である。

特別な感情などなくても、自分を助けてくれた人を心配するのは、人として当然のことだと思う。


「舞! ヤイーシュは私の命令でお前を守ったのだ。お前が感謝を捧げるのは私だ!」

「もちろん感謝してるわ。でも、ソレとコレとは別でしょう?」

「同じだ。お前は私の妃になるのだぞ。これ以上私の前で、側近の身を案じるような発言は禁じる!」

「アルのことが好きよ。もちろん愛してる。でも、違うことでしょう? 実際に身の危険を顧みず、助けてくれたヤイーシュなんだし」

「お前の“愛”も“感謝”も全て私のものだ!」

「わたしの心はわたしのものよ!」


同じ想いを抱きながら……ズレは少しずつ、ふたりの間に隙間を作っていった。


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