琥珀色の誘惑 ―王国編―
ヌール妃の後宮内には六角形のホールがあった。

大フロアで何処からでも庭に下りることが出来る。その東側の庭は、なんと見事な日本庭園だった。

眼前に砂庭式の枯山水が広がり、綺麗な砂紋を描いている。砂漠の砂を使っているのか、と思ったが、どうやら違うらしい。

国王はヌール妃のため、日本から砂を運ばせたのだという。

確かに、日本の神社仏閣などで見かける少し目の粗い白砂だ。水を使わず、砂と石で池を表す、日本独特の技法であった。


日本に居た時は、そんなに日本庭園に思い入れなどなかった。

だが、こうして日本を離れて目にすると、やはり胸に込み上げるものがある。


「さあ、マイ……こちらへ」


ヌール妃は黒地に見事な銀の刺繍が入ったドレスを着ていた。

そう、今にも羽ばたきそうな鶴の図案だ。舞と同じくワンショルダー、それが今のクアルン王族内で流行しているとのこと。しかも、肩に使われているのは錦の帯。着物をイブニングドレスに仕立て直した大胆なデザインであった。


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