琥珀色の誘惑 ―王国編―
(15)真実は心の中に
舞はしばらくの間、ヌール妃とハディージャ妃のやり取りを見ていた。
それで気が付いた。このハディージャ妃、嫌味を言う為に舞をチラ見するだけで、婚約のお祝いなど一言も言う気はないらしい。
他の女性王族は、舞を「アーイシャ様」と呼ぶ。だが、この国王第三夫人は名前すら呼ぼうとしなかった。
事前の予習で、ハディージャ妃はハルビー家の出身でライラの叔母と聞いていた。だが、これほどハッキリと敵視されるとは思わなかったのだ。
王族なんて“建前社会”もいいとこである。本音はどうであれ、王太子の母であるヌール妃には表向き誰も逆らわない。
日本もかなりの“建前社会”だと思う。
しかし、このクアルンにおける“建前”は、男性がいるかどうかで大幅に変わるということが良くわかった。
「……そうでしたわねっ! ハディージャ様のご質問ですよ。アーイシャ殿!」
不意に、ライラに大きな声で同意を求められた。
ボーッとしていたことを知られたくなくて、舞は咄嗟に返事をしてしまう。
「え? ええ、はあ、まあ」
否定とも肯定とも言える返事に、周囲はどよめいた。シャムスは涙ぐみ俯いてしまっている。
(え? わたし……なんか不味いこと言った?)
それで気が付いた。このハディージャ妃、嫌味を言う為に舞をチラ見するだけで、婚約のお祝いなど一言も言う気はないらしい。
他の女性王族は、舞を「アーイシャ様」と呼ぶ。だが、この国王第三夫人は名前すら呼ぼうとしなかった。
事前の予習で、ハディージャ妃はハルビー家の出身でライラの叔母と聞いていた。だが、これほどハッキリと敵視されるとは思わなかったのだ。
王族なんて“建前社会”もいいとこである。本音はどうであれ、王太子の母であるヌール妃には表向き誰も逆らわない。
日本もかなりの“建前社会”だと思う。
しかし、このクアルンにおける“建前”は、男性がいるかどうかで大幅に変わるということが良くわかった。
「……そうでしたわねっ! ハディージャ様のご質問ですよ。アーイシャ殿!」
不意に、ライラに大きな声で同意を求められた。
ボーッとしていたことを知られたくなくて、舞は咄嗟に返事をしてしまう。
「え? ええ、はあ、まあ」
否定とも肯定とも言える返事に、周囲はどよめいた。シャムスは涙ぐみ俯いてしまっている。
(え? わたし……なんか不味いこと言った?)