琥珀色の誘惑 ―王国編―
(なんか……負けてる?) 


ドレスより中身で負けるのは悔しい。

でも、何処からどう見ても純潔には思えない。


「ヌール様、お招きいただきありがとうございます。ご期待いただきながら、誇り高き王太子殿下の、最初の妻になれなかったことを非常に申し訳なく……お詫び申し上げます」

「ライラ、それは王太子殿下が望めば、と言うお話。ここでするべきではありませんよ」


ヌール妃が何でもない口調で諌めるが、


『あら。ごめんなさいね、ヌール殿。陛下も長老方もライラをお薦め下さったでしょう? ハルビー家の者は、今度こそと思っておりましたの。でも……王太子殿下も血は争えませんわね』


ハディージャ妃はやる気満々で、ヌール妃と舞を交互に見つめる。

だが、すぐにも回れ右をしそうな舞と、三十年間王宮で踏ん張ったヌール妃とでは根性が違った。彼女は一層胸を張ると、
 

『ええ本当に。陛下によく似て面食いでいらっしゃるから』


舞の姑は勝ち誇った顔で言い放ち……高らかに笑ったのだった。


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