弟矢 ―四神剣伝説―
二本の神剣は互いを呼び合った。

『二の剣』は正三に語りかける。もう片方の手に『一の剣』を掴め、と。

それは、向かい合う『鬼』にも、同じように聞こえているのだろう。

動きが止まり、しばし睨み合う。正三は、目の前の『鬼』を倒すことに、心を集中させる。


勝負は一瞬で決まった。


剣を手にする者の、素養の差だろうか。最初に動いた『鬼』を一合もせず、すれ違い様、正三は相手の両腕を斬り落とした。

斬られた反動で、『一の剣』を握り締めたまま、男の腕は柵を越える。両腕を失くした『鬼』は、意味不明の咆哮を上げ、両膝をつき……そこを『二の剣』が一閃。

正三は敵の首を刎ねた。



止める、時間すらなかった。

勝負はついている。既に、致死に値する傷を負っているのだ。とどめを刺すにしても、首まで落とす必要があったのか?


「正三。お前、それってやり過ぎじゃねえか? なぁ」


ゆっくり、声を掛けながら乙矢は近づこうとした。だが、正三は動きを止めたまま、何も答えない。

派手に燃え盛る武器庫の熱で、乙矢の額に汗が流れた。


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