弟矢 ―四神剣伝説―
「では、乙矢どのが鬼となり、正三を殺したと言うのですか?」

「はい。そして……その乙矢殿を新蔵が斬った、と」


長瀬は混乱の中、凪に答えを求めた。

衝立の向こう、畳の上に弓月は呆然と座り込んでいる。


「まずは凪先生に相談せねば」


長瀬は弓月を引きずるように、宿まで連れて戻った。

さすがに長瀬もここまで落ち込む弓月を見るのは初めてで、戸惑っていた。


「一矢どのはそのことを、蚩尤軍に放った間者から報告された、と」


凪の言葉に長瀬はうなずく。


「どう、思われますか? 凪先生」

「目の前の出来事すら見えぬ身です。私にはなんとも……。弓月どの、大丈夫でございますか?」


乙矢や正三の身は心配だが、凪には弓月の打ちひしがれた様子が気になる。

そんな凪に答えるという訳でもなく……弓月はポツリポツリと口を開いた。


「私が……間違っていたのです。正三を置いてくるべきではなかった。里人も皆殺され……それが乙矢殿の仕業であるなら……彼に神剣を抜かせた私の責任です」


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