弟矢 ―四神剣伝説―
「なるほど、さすがの貴様も腕を落とされ血迷うたか」
 

ハッとして、来た道を注視したのは弓月らのほうだった。

遠目には、泰然とした面持ちで一矢が立っている。近づけば、額に浮かぶ脂汗に気付いたかも知れないが、それが目に入る距離ではなかった。

声にわずかな恐れを感じ取ったのは、形ある物が見えぬ凪だけだ。



この時、問われた狩野の二つの眼は濁り、限りなく灰色に近くなっていた。

弓月は恐怖と苛立ちを同時に覚える。この男がこのまま鬼となっては、『仮面の男の正体』を訊ねることはできなくなってしまう。


「仮面の男とは……この爾志一矢ではないのか? 答えよ、狩野!」


ふふ……ふふふ……。

弓月の問いに狩野は笑みを浮かべたまま、急激に斬りかかった。だが、片腕とはいえ『白虎の鬼』は侮れない。刀を構えた弓月を凪が突き飛ばした。



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