弟矢 ―四神剣伝説―

四、『白虎』の勇者

目標は――神剣『白虎』。


乙矢が駆け出した直後、一矢もそれに気付き叫んだ。


「乙矢っ! 『白虎』を手に勇者となる自信が貴様にあるのかっ!? 『白虎の鬼』となれば二度と人には戻れんぞっ!」


先刻とは逆で、今度は一矢が乙矢の心を惑わせ、混乱に陥れようとした。


しかし、乙矢は右足で狩野の腕を押さえ込むと力ずくで指を開かせ、神剣『白虎』を右手でしっかりと掴む。


そして、乙矢はその白き剣先を一矢に向け……構えた。


雲間から一条の光が射し込む。


閃光は真っ直ぐに乙矢を照らし、手にした『白虎』に吸い込まれる。鈍色(にびいろ)の刀身は、見る間に輝きを取り戻し、白刃に日輪の色を映した。


――我が勇者よ、この力、欲しいままに。 


『白虎』を掴む右の掌から、光は乙矢の体内に入り込んでくる。乙矢の右腕は、火が点いたような感覚に囚われた。そしてそれは、戸惑う時間すら与えず、乙矢の全身を駆け抜ける。


――我は『白虎』。我が主に四神剣最強の力を与える。如何様にも。


鬼の声が乙矢の脳裏に響く。

全身が陽光に包まれ――意識の根底まで燃やし尽くされそうになる。その炎はとても収まるどころではない。

乙矢は白煙を纏い、放たれた矢の如く、まっしぐらに一矢に向かった。


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