弟矢 ―四神剣伝説―
『白虎』より、一寸六分『朱雀』は長い。

身長と同じく、手足の長さを考えても宗次朗のほうに分がある。


宗次朗は森を背に東から西に移動し……木が途切れた一瞬、刃を垂直にして乙矢に斬りかかった。


中天からわずかに西に傾いた太陽を利用したのだ。


遮られた日光が瞬時に乙矢の視界を奪う。


だが……。


――我が勇者よ。闇を恐れるな。


『白虎』が主に警告を発する。


猶予はない。


『白虎』を信じ、乙矢は即座に両眼を閉じた。


そのまま、ごく自然な動作で乙矢が『白虎』を持ち上げた時、陽光は見る間に、白刃に吸い込まれていったのだ。


瞬刻――峡谷に『白虎』と『朱雀』の刃音がこだました。宗次朗は、返す刀で乙矢の腕を狙うが、相手は両刃の剣。乙矢はそのまま腕を引き、半瞬早く、宗次朗の右腕を薄皮一枚残して切り裂いた!


< 467 / 484 >

この作品をシェア

pagetop