弟矢 ―四神剣伝説―
「一矢殿を見たとき、あなたの若かりし頃と重なった。素晴らしい才能だが、自信と慢心が紙一重の危うい剣だ、と。だが、乙矢殿は……」
「穏やかで優しい男です。騙されても、踏みつけられても、あの方なら、人を信じることをやめぬでしょう。助けてくれと言われたら、黙って逃がしてやるような男です。例え、親の仇であっても」
さすがにそれには長瀬も鼻白む。
「それは、褒めるべきことでござるか?」
長瀬の言うこともわかるので、凪も否定はしなかった。
「さあ、どうでしょう。――ただ、あの腕は、見過ごしがたいと思っているだけです」
「だが、人を殺したくないという者を、神剣は選ばぬであろうな」
「そればかりは『青龍』に聞かねばわかりますまい」
長瀬はもう一つ気になることがあった。
乙矢はあの時『弓月殿を鬼にはできない。それだけは……できなかった』そう言った。奴は、兄の許婚である姫に懸想しているのだろうか?
いや、それだけではない。
姫の乙矢を見る瞳も、この上なく危険だ。義弟や同志に向ける眼差しではない。だが、言わずとも凪なら察しているはずである。長瀬はあえて言葉にはしなかった。
「穏やかで優しい男です。騙されても、踏みつけられても、あの方なら、人を信じることをやめぬでしょう。助けてくれと言われたら、黙って逃がしてやるような男です。例え、親の仇であっても」
さすがにそれには長瀬も鼻白む。
「それは、褒めるべきことでござるか?」
長瀬の言うこともわかるので、凪も否定はしなかった。
「さあ、どうでしょう。――ただ、あの腕は、見過ごしがたいと思っているだけです」
「だが、人を殺したくないという者を、神剣は選ばぬであろうな」
「そればかりは『青龍』に聞かねばわかりますまい」
長瀬はもう一つ気になることがあった。
乙矢はあの時『弓月殿を鬼にはできない。それだけは……できなかった』そう言った。奴は、兄の許婚である姫に懸想しているのだろうか?
いや、それだけではない。
姫の乙矢を見る瞳も、この上なく危険だ。義弟や同志に向ける眼差しではない。だが、言わずとも凪なら察しているはずである。長瀬はあえて言葉にはしなかった。